研究概要 |
本計画研究「陽子反陽子衝突実験CDFによるトップとボトム・フレーバーの物理」では,米国フェルミ国立加速器研究所の陽子反陽子衝突型加速器テバトロン衝突器を用いた世界最高エネルギー陽子反陽子衝突実験(CDF実験)のデータ収集と物理解析を強力に推進してきた。平成22年4月に最大瞬間輝度4.0x10^<32>cm^<-2>s^<-1>を達成した。これは設計値3x10^<32>cm^<-2>s^<-1>を大きく超えるものである。平成22年度末までに積分輝度8.7fb^<-1>に相当する衝突事象データを取得した。データ収集と並行してデータの解析を進め,物理データは本研究費で購入した磁気ディスクに保存した。解析プログラム開発,シミュレーション,物理の検討は現有の筑波大学の計算機と新たに購入した計算機PCを用いて行なった。この衝突事象の解析によって,本研究のテーマであるトップクォーク生成崩壊の精密測定,Bハドロン生成崩壊の精密測定について,下記に示すような成果を挙げた。 ボトム・フレーバーについては,B_s→J/ψφの崩壊測定によって,B_s中間子の2つの質量固有状態の崩壊幅の差ΔΓ_sをΔΓ_s=0.075±0.035(統計)±0.01(系統)ps^<-1>(CPの破れのphase β_s=0と仮定したとき)と決定した。CPの破れのphase β_sとΔΓ_sを同時に測定した結果,68%信頼度で0.02<β_s<0.52あるいは1.08<β_s<1.55を得た。β_sとΔΓ_sの測定結果は0.8σで標準理論予言と一致している。 トップ・フレーバーについては,トップクォーク対生成の前後方非対称性を測定した。5.3fb^<-1>のデータを解析して前後方非対称性を測定した結果,レプトン+ジェット・チャンネルでは理論予言値0.06±0.01に対して,非対称度0.158±0.072(統計)±0.017(系統)を得て,2レプトン・チャンネルでは非対称度0.42±0.15(統計)±0.05(系統)を得た。これらの結果は,それぞれ理論予言値から1.2σと2.3σずれている。
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