研究概要 |
本計画研究「陽子反陽子衝突実験CDFによるトップとボトム・フレーバーの物理」では,米国フェルミ国立加速器研究所の陽子反陽子衝突型加速器テバトロン衝突器を用いた世界最高エネルギー陽子反陽子衝突実験(CDF実験)のデータ収集と物理解析を強力に推進してきた。30年近く続いたテバトロンの運転を平成23年9月末に終了し,積分輝度10.0fb^<-1>に相当する衝突事象データを取得した。データ収集と並行してデータの解析を進め,物理データは本研究費で購入した磁気ディスクに保存した。解析プログラム開発,シミュレーション,物理の検討は現有の筑波大学の計算機と新たに購入した計算機PCを用いて行なった。この衝突事象の解析によって,本研究のテーマであるトップクォーク生成崩壊の精密測定,Bハドロン生成崩壊の精密測定について,下記に示すような成果を挙げた。 ボトム・フレーバーについては,9.6fb^<-1>のデータを用いたB_s→J/ψφの崩壊測定によって,B_s中間子の2つの質量固有状態の崩壊幅の差ΔΓ_sをΔΓ=0.068±0.026(統計)±0.007(系統)ps^<-1>(CPの破れのphase β_s=0と仮定したとき)と決定した。CPの破れのphase β_sとΔΓ_sを同時に測定した結果,68%信頼度で-0.06<β_s<0.30あるいは1.26<β_s<1.55を得た。β_sとΔΓ_sの測定結果は誤差の範囲内で標準理論予言と一致している。またD→KK,ππ崩壊におけるCP非対称性パラメータムΔA_<CP>を測定した結果,ΔA_<CP>=(-0.62±0.21(統計)±0.010(系統))%となり,チャーム・フレーバーにおいて2.7σでCPの破れが見えた。これはLHCb実験の結果を確認するものである。 トップ・フレーバーについては,トップクォーク対生成の前後方非対称性を測定した。8.7fb^<-1>のデータをレプトン+ジェット・チャンネルで解析して前後方非対称性を測定した結果,理論予言値0.066に対して,非対称度0.162±0.047を得た。この結果は,理論予言値から2.0σずれている。この前後方非対称性のトップ対不変質量Mへの依存性を測定すると,M>450GeV/c^2では非対称度0.296±O.067を得た。これは理論予言値0.100から2.9σずれている。
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