本年度は、超広視野CCDカメラHyper Suprime Cam(HSC)の読み出し回路(特にデジタル部分)とデータ解析用ソフトウェアの開発、CCD試験、補正光学系製作を進めた。具体的には、以下のとおりである。 宇宙論的弱重力レンズ効果を測定する際には、測定の系統誤差を押さえ込む必要がある。この系統誤差の要因はCCDのピクセルの特性やノイズ、大気揺らぎ、測定機器の位置決め誤差などにより発生する、重力レンズ効果以外の2次的ノイズ(像の広がり、歪み)である。この2次的ノイズを直交基底で展開することにより、従来よりも数学的により精密に定量化することを試みた。そして、この星の測定を行うアルゴリズムと、星の測定結果を用いて銀河像の2次的ノイズを補正するアルゴリズムを計算機上に実装した。そして、銀河像に弱重力レンズ効果と2次的ノイズを付加したシミュレーションデータを作成し、これに新しく開発した解析手法を適用して得られたシグナルと真の値を比較することにより、測定精度・計算速度などの測定手法の改善を行った。また、1ショットあたり、2ギガバイトにのぼる大量のイメージングデータを解析するためのプログラム(pipelineと呼ばれる)を高エネルギー実験Belle IIで使われるソフトウェアを応用して開発した。さらに、本研究室が開発したCCDカメラ用の後段読み出し回路を前段回路と接続し、性能試験を行った。 さらに、昨年同様、プリンストン大学をはじめとする国外機関との国際協力を推進し、重力レンズの解析プログラムの開発やサーベイ計画の検討を進めた。平成22年3月に研究会を開催し領域全体の進捗を確認した。
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