単純ヘルペスウイルス(HSV)は少なくとも74種の遺伝子をコードする。本研究はHSVの増殖、病原性発現におけるHSV遺伝子産物の機能、役割を明らかにすることを目的とする。 UL14遺伝子産物はすべてのヘルペスウイルスがホモログを有するコア遺伝子の一つであるが、我々はUL14が分子シャペロン様機能、抗アポトーシス活性をもつことを明らかにしてきた。今回、UL14遺伝子欠損ウイルス(ΔUL14)や転写制御機能をもつ主要テグメント蛋白質VP16にGFPを融合させたVP16-GFP発現ウイルス(14D-VP16G)を用いて増殖過程におけるUL14の役割を明らかにすることを試みた。ΔUL14では感染2時間後のIE遺伝子の発現が有意に低いことが判明した。さらに、14D-VP16Gを用いて検討した結果、感染初期のVP16-GFPの核内蓄積、カプシドの核周囲への到達が有意に遅延していることがわかった。以上の観察から、UL14は侵入直後のヌクレオカプシド、及び主要テグメントタンパク質VP16の核への輸送に重要な役割を果たしていることが示唆された。 UL56遺伝子はαヘルペス亜科に特有な遺伝子で典型的なアクセサリー遺伝子の一つである。これまでにUL56遺伝子産物がウイルス粒子に含まれるC末端アンカー型type II膜蛋白質であり、神経特異的キネシンKIFIA及びウイルス粒子の成熟・放出に重要なUL11と相互作用することを明らかにしてきた。今回、UL56と相互作用する細胞宿主因子としてユビキチンリガーゼNedd4を新たに固定したので、HSV感染細胞におけるNedd4の動態について検討した。共発現細胞で両者は共局在し、UL56との共発現によりNedd4のユビキチン化パターンに変化が認められた。その意義については今後の課題である。
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