細胞内寄生性細菌である抗酸菌とリステリアの宿主細胞内増殖動態と宿主細胞応答について、それぞれの病原因子の役割を中心に解析を行った。 結核菌感染マクロファージにみられる宿主細胞ネクローシスの誘導機構につき、病原因子候補であるRD1領域を欠損させた変異株と野生株の比較から、RD1領域が感染マクロファージのATP枯渇とミトコンドリア膜傷害に関与することを明らかにした。また、一方、カスパーゼ阻害薬の作用から、病原性の高い結核菌は未知因子の作用によりとくにcaspase-9を活性化し、それによって宿主細胞のネクローシス進展を抑制して生存部位を確保しようとする機構を有することも明らかになった。これらの研究成果は、米国Infection and Immunity誌および欧州FEMS Mmicrobiology Letters誌に平成19年度受理公表された。 リステリア感染マクロファージ内での感染菌の動態と宿主サイトカイン応答の関連について解析を行った。まずリステリアEGD株のLLO遺伝子(hly)を完全欠失した変異株を作製し、本来のhly遺伝子領域に種々のリコンビナント遺伝子を復帰挿入させることでisogenic mutantを作製した。これら変異株をマクロファージに感染させ、各種サイトカインの発現産生を詳細に検討した結果、LLOの膜傷害活性による菌体の食胞から細胞質への脱出に加え、その後細胞質内でLLOの正常な1-3ドメインが異物認識分子による識別を受けてカスパーゼ活性化を誘導することが、LLO産生性リステリア菌株が示す特異なサイトカイン誘導能と感染宿主におけるTh1型防御免疫の誘導成立に必須であることを証明することができた。これらの結果は平成19年度に米国Infection and Immunity誌および米国Journal of Immunology誌に受理された。
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