代表的な細胞内寄生菌であるリステリアと抗酸菌(結核菌、BCG)について、それぞれの病原因子と宿主免疫応答の相関を解析した。リステリアでは主要病原因子LLOとその遺伝子であるhlyを、抗酸菌ではESX-1をコードするRD1領域に着目し、以下のような新たな知見を得た。何れも、菌の増殖に関わる病原因子がどのように宿主応答を誘導するかについて新たな理解を深めるものである。 (1)リステリアのhly遺伝子産物は、感染マクロファージにCaイオンの流入を誘導してcalpain活性化を介したIL-1αの成熟と分泌を可能にする。 (2)リステリア感染によるcaspase-1活性化と、それによるIL-1β、IL-18のプロセッシングはhly依存的であり、細胞質に脱出した菌に由来するDNA断片をAIM-2が認識し、インフラマソーム形成が起こることによる。 (3)マクロファージによるリステリアの貪食には、菌のTLR2リガンド認識によっておこるPI3キナーゼとRac1の活性化が関与する。 (4)マウスのBCG感染では、成立したTh1依存性の獲得免疫の持続が、宿主のPD-1/PDL-1経路による抑制性シグナルによって抑制される結果、持続感染状態が続く。 (5)結核菌のRD-1領域産物はマクロファージのcalpain活性化を誘導し、結果的にIL-1αの産生分泌が起こる。 (6)結核菌のPPE37タンパクは、感染マクロファージにおけるNF-κB活性化を抑制し、結果的に炎症性サイトカインの産生分泌を抑制する。
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