研究概要 |
前年度に解析したパスツレラ毒素(Pasteurella multocida toxin, PMT)の細胞内活性領域(C-PMT,アミノ酸位569-1285)の結晶構造を元に、PMTの細胞内での作用様式を検討した。C-PMTに3つのドメイン構造(C1,C2,C3)からなり、そのうちのC1が、Clostridium difficiletoxin BのN末端側領域と立体構造上の相同性が高いことがわかった。toxinBのこの領域は生体膜の主要成分であるリン脂質に親和性があることが報告されている。 そこで、C1ドメインの細胞膜局在性を調べた。動物細胞に発現させたC-PMTとC1ドメインの部分的欠失体(ΔC1(4H))の細胞内局在を調べたところ、発現したC-PMTは細胞膜に局在し、その局在能はC1ドメイン欠失により消失した。さらに欠失体を作製して解析したところ、C1ドメインN末端側を構成するどのヘリックスを欠失しても膜局在化能が失われることが分かった。またPMTが活性化するシグナル経路下流のSRFとNFATのレポーターアッセイを行ったところ、ΔC1(4H)を発現させた場合には全く活性が認められなかった。一方、ΔC1(4H)の組換えタンパクをHVJリポソーム法により細胞質に導入してPMT活性(DNA合成とPLC活性化)を調べたところ、ΔC1(4H)では肌C活性化能のみが低下していた。 以上の結果から、C1はC-PMT膜局在化と、PLC活性化能の発揮に関与していることがわかった。すなわち、PMTの標的分子は、膜に局在するものとそうでないものの少なくとも二種類があり、膜局在分子はPLC活性化能に関与し、そうでない分子はPMTのDNA合成促進能に関与することが推測された。
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