計画研究
食中毒の原因となるウエルシュ菌エンテロトキシン(C.perfringens enterotoxin, CPE)は古くから膜孔形成毒素と考えられているが、それを示す直接的な証拠はこれまで得られていない。今年度、本研究ではCPE全分子の結晶構造解析に成功した。その結果、本毒素にβ型孔形成毒素の構造学的特徴を見出すことができた。種々の条件で作製したCPEの結晶から、最高2.0Åの分解能のX線回折データを得ることができた。その解析の結果、CPEは95x42x32Åの伸展した分子構造をとり、3種のドメインから構成されていることがわかった。ドメインIはこれまでC-CPEと呼ばれていた受容体結合ドメインで、ドメインIIおよびIIIはβストランドが密接してひとつのモジュール構造をとっていた。3種のドメインの位置関係やドメインIIとIIIの構造はβ型孔形成毒素であるアエロリジンやウエルシュ菌ε毒素などと類似した。先述のモジュール構造には長い2本のアンチパラレルβストランドが存在し、これに垂下するように存在するαヘリックスとそれに隣接するβストランドは疎水性アミノ酸が1残基ごとに分布するアミノ酸配列様式を示した。このようなアミノ酸配列は、細胞膜への貫入ループ領域に共通する。また、長い2本のアンチパラレルβストランドは、貫入ループを細胞膜に接近させるために大きく屈曲するウエルシュ菌パーフリンゴリシン(PLO)のドメイン構造と類似した。PLOもβ型孔形成毒素に分類されることから、以上の構造的特徴を併せて、CPEがβ型孔形成毒素に分類されうることが考えられた。
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