計画研究
本研究課題では、極めて高い遺伝的多様性を維持しているマラリア原虫をモデルとして、寄生適応と病原性に関わる寄生体の遺伝的多様性の分子基盤を明らかにすることを目的とする。そのために、マラリア原虫の遺伝子多型(MSP-1等)と遺伝子ファミリー(SERAfamily)について、集団遺伝学的解析や系統進化論的解析を行い、宿主免疫防御監視回避の分子メカニズムの解明を行う。本年度は以下の研究成果を得た。1.SERA遺伝子ファミリーの系統進化論的解析を行い、(1)いずれの原虫にもSERA遺伝子が複数個(3-12個)存在する。(2)Pf-SERA8のオルソログが8種のマラリア原虫全てに存在し、それらは赤血球期ではなく蚊のステージにおいて発現している。(3)マラリア原虫のSERA遺伝子ファミリーを構成する遺伝子は4つのグループに分類できることが明らかになった。さらに、遺伝子ファミリーを18種のマラリア原虫を用いて解析を行い系統関係について明らかにした。2.三日熱マラリアは熱帯熱マラリアに次ぎ流行をしている。三日熱マラリア患者の血液を用いてマラリア原虫SERAを含むいくつかの抗原遺伝子の多型解析を行ったところ、予想を遥かに超える多重感染を発見した。本結果は遺伝子多型を維持するための多重感染をする特殊な分子機構が存在することを示唆する。3.msp1の多型の起源と進化を知る目的でP.vivax及びP.vivaxに近縁なマカクサルマラリア原虫7種についてmsp1の進化集団遺伝学的解析を行った。その結果、P.vivaxのmsp1多型は種分岐後に誕生し、種に特有な形で多様化選択が発生していることが明らかになった。これはmsp1多型の起源と進化がマラリア原虫系統間によって大きく異なること、を示唆する。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (8件)
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