計画研究
<平成20年度の成果>我々が展開しているマラリアワクチン実用開発において、その効果を飛躍的に高めるため、防御エピトープである8mer反復配列を組み込んだ改良型SE36蛋白質を発現・精製しマウスに免疫した結果、8mer反復配列に対する抗体が上昇した。またアジュバントとしてCpGを添加することによってカニクイザルで約50倍の抗体価の上昇を見た。これらの結果、SE36をベースにしたトラベラーズワクチン開発の可能性が示唆された。マラリア原虫10種について、SERA遺伝子ファミリーの全遺伝子レパートリーと塩基配列を新たに決定した。系統学的な解析からそれらは4つのグループに分けられた。代表的な種について発現解析を行ったところ、げっ歯類と霊長類を宿主とするマラリア原虫では異なるグループに属する遺伝子が増殖に必須なタンパク質をコードしていることが推測され、SERAは異なる宿主への対応のために遺伝子重複により、レパートリーを変化させていったことが推測された。タイ、トルコ、アフリカからの三日熱マラリア原虫分離株について、抗原分子であるSERA、MSP-1およびマイクロサテライト領域4箇所の配列を決定し、多重感染度と多様性度を解析した。その結果、流行度と多重感染度の間に正の相関はみられず、低流行地域であっても原虫は多種株の混合感染という形で多様性を保持した状態で感染を成立させており三日熱マラリア原虫の多重感染は恒常的に観察される現象である可能性が示唆された。世界4大州、8ヶ国の原虫集団についてハウスキーピング遺伝子(serca,adsl)、抗原遺伝子(msp1, csp)のシーケンスを得、集団遺伝学的な解析を行った。結果、塩基多様度はどの地域でも抗原遺伝子で高く、どの遺伝子においてもアフリカが最高であった。抗原遺伝子では多様化選択がどの地域でも認められた。以上は、世界のP.falciparum集団が遺伝的多様性において共通点と相違点を有し、マラリアの獲得免疫が一様に現れないことを示唆する。P.vivaxに最も近縁なサルマラリア原虫P.cynomolgiをニホンザルに感染させ、原虫DNAを調製した。高速シーケンシング法によって総塩基107Mb、冗長度約3.7倍のリードを得た。リードはP.vivax,P.knowlesiの遺伝子の大部分にマッピングでき、pir遺伝子群などの多重遺伝子族では3種間における遺伝子の欠失・挿入が示唆された。
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