(1) 麻疹ウイルスの細胞侵入におけるウイルスと宿主細胞の相互作用を明らかにするために、麻疹ウイルスH蛋白質と受容体の複合体の結晶構造を決定した。その結果、H蛋白質と受容体の結合様式の詳細が明らかになるとともに、感染やワクチン接種により誘導された免疫応答から麻疹ウイルスが回避できない理由が示唆された。 (2) yeast two hybrid systemを用いて、麻疹ウイルス増殖におけるウイルス蛋白質および宿主蛋白質間の相互作用を調べた。その結果、これまで知られていなかった麻疹ウイルスM蛋白質とN蛋白質間の相互作用を見出した。また、この相互作用がウイルスRNA合成やウイルス粒子形成の調節に重要な役割をしていることを組換えウイルスを作製することにより明らかにした。さらに、麻疹ウイルスC蛋白質と相互作用をする宿主蛋白質を多数同定し、それらのウイルス増殖における役割について現在解析を進めている。 (3) 麻疹ウイルス感染における宿主の自然免疫応答を解析し、麻疹ウイルス感染の認識には宿主細胞のセンサー分子であるRIG-IとMDA5の両者が働いていることを明らかにした。また、ミトコンドリア蛋白質であるmitofusin 2が自然免疫の調節に重要な役割をしていることを明らかにした。 (4) 麻疹ウイルスC蛋白質の機能解析を可能にする新しい組換え麻疹ウイルス作製法を開発し、ワクチン株のC蛋白質は弱毒化に寄与していないことを明らかにした。 (5) 麻疹ウイルスによる宿主の免疫抑制に関してマウスモデルを用いた解析を行い、リンパ球のアポトーシスおよびIL-10の産生増加が免疫抑制に関与していることを示した。
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