Listeria monocytogenes(以下リステリア)の腸管感染の成立にはリステリア菌のinlA遺伝子産物と腸管上皮細胞のE-カドヘリンの結合が重要である。マウスのE-カドヘリンのアミノ酸配列はヒトのE-カドヘリンのアミノ酸配列と異なっており、それゆえにマウスにおいては腸管感染が成立しない。この問題を回避して腸管におけるリステリア感染動態と免疫記憶の成立機構を解析するために、これまでヒトのE-カドヘリントランスジェニックマウスを用いた系を構築してきた。 しかし、構造生物学的解析からマウスのE・カドヘリンに結合が可能なInlAの作製が可能となったことを受けて、本年度はjnlA変異株の作製を行った。遺伝子配列上は目的の変異株を得ており、今後経口感染系を確立する予定である。これにより本研究で使用予定の様々な遺伝子改変マウスをE-カドヘリントランスジェニックマウスに交配することなく実験を進めることが可能になる。同時に、リステリア感染における宿主PI3Kの機能を明らかにするために、c-Metに結合することで宿主細胞のPI3K経路を舌性化するといわれているInlBを欠損するリステリアも上記の変異株から構築した。 リステリアの脳内感染系の検討から、炎症時にはCD4陽性のTh17細胞よりもγδ型T細胞が主としてIL-17を発現することが明らかとなった。 MHCテトラマーを用いた解析からは、脳内に多数のリステリア特異的なCD8陽性細胞が浸潤することが明らかになり、今後免疫記憶の成立の解析に有用な手法が確立できた。また、脳内においてリステリアの処理にかかわると推定されるミクログリアの初代培養系を用い、ミクロクリアがリステリアの殺菌能を有することを明らかにした。
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