グラム陽性細菌のListeria monocytogenes(Lm)の侵入因子であるInternalin B(InlB)の機能を検討した。InlBは肝細胞への侵入に関与すると考えられているが、これまでの報告の多くはin vitroの報告であり、in vivoの感染に関与する侵入因子やその発症機序についての報告は少ない。本研究では、in vivoの腸管からのLmの感染に重要な因子としてInlBを同定し、大部分のLmがInlB依存的に回腸のパイエル板から侵入することを明らかにした。 InlB欠損株を作成し、腸管上皮細胞株への侵入能を評価した。その結果、InlB欠損株は、マウスの腸管上皮細胞株への侵入能が野生型Lmの1/100程度まで有意に低下した。さらに、マウスに野生株とInlB欠損株を胃内投与し、その生存率を確認したところ、両Lm株とも最終的な生存率は60%程度であるものの、InlB欠損株を投与したマウスのリステリア症の発症と死亡時期が有意に遅れた。そこで、Lmが上皮から侵入する際にInlBが関与している可能性が高いと考え、マウスの空腸上部と回腸下部を結紮し、そのループ内に菌を注入して、腸管からの菌の侵入能を評価したところ、InlB欠損株を投与したマウスでは、投与後30分での腸間膜リンパ節、脾臓、肝臓への菌の伝播が有意に減少した。また、野生株では大部分のLmが回腸のパイエル板から侵入していたが、InlB欠損株ではその侵入が大幅に低下した。さらに、Lmがパイエル板から侵入する像を蛍光顕微鏡にて可視化したところ、LmがM細胞を介してパイエル板に侵入している像が得られた。これら結果より、Lmがin vivoの腸管から侵入する際に、大部分のLmがInlB依存的に回腸のパイエル板上のM細胞から侵入していると結論した。
|