本研究の目的は、膜超分子モーターの機能解明の効率化を図る実験プラットフォームを、マイクロ・ナノ加工技術によって確立することである。最終年度の本年度は、当初の予定通り、以下の2項目を達成することに成功した。 (1)膜超分子モーターが再構成可能な脂質二重膜アレイの実現 今までの当研究室の研究で、均一な大きさや性質を持つ脂質二重膜アレイを作製し、そこに膜タンパク質を再構成して解析を行うプラットフォームの構築に成功していたが、本年度ではそれをさらに発展させ、脂質二重膜を上下に有するようなマイクロチャンバーアレイの作製に世界で初めて成功した。これにより複雑な分子の流れを持つ場合の膜タンパク質の特性を解析することができる。 (2)一分子観察のための簡便なマイクロチャンバーの実現 本年度は、脂質膜で囲われたマイクロ油中水滴の電気融合・分裂現象をベースにした溶液交換チャンバーを実現することに成功した。このシステムにより、膜超分子モーターを含む生体高分子の構造変化や機能発現の様子を生体高分子の周囲の溶液を数十~数百ミリ秒オーダーの高速で交換しながら観察し解析することができるようになった。 以上のシステムを集積化することで、再現性・安定性・ハイスループット性の高いデバイスの構築が可能であり、膜超分子モーターの機能解明の一層の効率化が可能になるシステムを開発することができたと考えられる。
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