植物型ATP合成酵素のγサブユニットの酸化還元制御による回転調節機構の詳細を明らかにするために、シアノバクテリアATP合成酵素に変異導入し、回転と停止の詳細(特に停止位置の解明)を一分子レベルで詳細に調べた。その結果、酸化状態ではいわゆる「ADP阻害」と言われている80度の停止位置での停止頻度が増加し、停止時間も長くなることがわかった(発表準備中)。一方、植物型ATP合成酵素のγサブユニットに特徴的な挿入配列の役割を明らかにするため、この配列を削除した変異体の詳細な解析を行った。1分子観察の結果から、この挿入配列がADP阻害の誘導に重要な役割を果たしていることおよび挿入配列を欠損したシアノバクテリアの生理レベルでの解析から、ADP阻害が暗所での細胞内のATPレベルの維持に直接的な役割を持っていることを明らかにした(投稿論文執筆中)。葉緑体型ATP合成酵素の特異的阻害剤であるテントキシンによる回転阻害の解析によってADP遊離段階が阻害されることを明らかにした。 シアノバクテリアATP合成酵素のεサブユニットおよびC末端側ヘリックス部分を植物由来のものに置換したキメラサブユニットについてNMRによる溶液構造の解析を行い、両者のヘリックス部分の長さあるいは二本のヘリックスをつなぐループ部分の長さがバクテリア由来のものと著しく異なることを明らかにした(論文投稿中、PDBコード2RQ6および2RQ7)。
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