計画研究
べん毛モーターの回転力のエネルギー源は電気化学的ポテンシャル差によるイオンの流入である。しかし、どのようにして電気化学的ポテンシャル差がべん毛の機械的回転力に変換されているのかは不明のままである。その原因として、べん毛超分子複合体での固定子-回転子間相互作用の詳細が十分に明らかにされていないこと、in vitroでのべん毛モーター再構成系が確立されていないため、モーター一回転のために必要なイオンの流入量を定量的に測定できていないことなどが挙げられる。in vitroべん毛モーターの再構成系の構築のためには、まずリポソームに再構成したPomAB複合体にNa^+チャネル活性が存在し、取り込んだNa^+の定量的測定系の確立が必要である。これまでに大腸菌由来の転写翻訳再構成系PURESYSTEM(ポストゲノム研究所)、大腸菌抽出液系RTS(ロシュ)、小麦胚抽出液系ENDEXTテタノロジー(セルフリーサイエンス)を使用した固定子タンパク質(PomAB)の合成を試みている。その結果、PURESYSTEMを使った系において、界面活性剤存在下でタンパク質合成を行い、PomABの合成と可溶化両分からの回収に成功した。そこでホスファチジルコリンで作成したリポソーム存在下でPomABの合成を行った。しかし、界面活性剤、リポソームどちらの存在下でもPomBは推定分子量より約2kDaくらい小さいポリペプチド鎖として合成されていた。この原因を解明するとともに、PomA/PomBが正しい配向でモータータンパク質が膜挿入されているかを確認する必要があるが、合成が確認されたことは大きな成果であり、今後のチャネル活性の測定系の構築に大きく前進した。さらに、固定子構成タンパク質PomBにGFPを融合させたGFP-PomBの局在の条件を調べたところ、培地にNa^+が存在するときは極局在がみられるが、培地を交換してNa^+をK^+に置換すると極局在がみられず蛍光は菌全体に拡散し、更に蛍光ドットの局在と拡散は可逆的であることが分かった。固定子と回転子の相互作用に対するイオンの影響を明らかにできると期待される。
すべて 2006
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