計画研究
べん毛モーターの回転力のエネルギー源は電気化学的ポテンシャル差によるイオンの流入である。しかしながら、どのようにして電気化学的ポテンシャル差がべん毛の機械的回転力に変換されているのかは不明のままである。べん毛超分子複合体での固定子-回転子間相互作用の詳細を明らかにすることを目標にしている。モータータンパク質が膜タンパク質であることから、解析に十分な量を得ることが難しい。そこで、無細胞タンパク合成系を用いて、研究を進めることにした。PURESYSTEMを使った系において、界面活性剤存在下でタンパク質合成を行い、ポリソーム存在下でPomABの合成に昨年度成功した。しかし、PomBは推定分子量より約2kDaくらい小さいポリペプチド鎖として合成されていた。その原因を調べた結果、N末端側に何らかの異常があると考えられた。PomB Pro-12に変異を導入すると、正常な分子量を持っていた。また、N末端にGFPが融合したPomBは、分子量が正常であった。このことから、PomBのN末端領域の構造が変化することで切断が抑圧されたのではないかと思われた。PomB Pro-12変異タンパク質を発現した菌体が、野生型と同程度の運動能を示した。これらの合成PomABを用いて、プロテオリポソームへの再構を行い、Na^+取り込み活性の測定する準備ができた。固定子構成タンパク質PomBにGFPを融合させたGFP-PomBの局在の条件を調べたところ、培地にNa^+が存在するときは極局在がみられるが、K^+に置換すると極局在が見られなくなった。このイオン依存的な蛍光ドットの局在と拡散は可逆的であることを昨年示した。本年度は、PomBの推定イオン結合部位を含む、種々の変異体を作成してモーターの局在化を調べ、モーター機能と局在の関連をさらに明らかにできた。また、イオノフォアを用いた実験で、局在には、おそらく膜電位は必要ではないことが示された。
すべて 2008 2007
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件)
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