計画研究
まず、分子動力学法を用いて、F1-ATPaseのα3β3γの立体構造に対し、平衡状態の分子動力学シミュレーションを30ns行った。その結果、立体構造のゆらぎには、回転の初期のあたる構造変化に類似した動きが含まれていることが明らかになった。その平衡状態のシミュレーション結果をもとに、QM/MM計算の初期構造を作成するとともに、まだ立体構造が明らかになっていないATP結合待ちの立体構造のモデリングを行った。ATP結合待ち構造では、1分子計測により、現在得られている加水分解待ちの構造よりγサブユニットが40度ずれている、βDPサブユニットが半分ほど開いているなどのことがわかっている。それらの情報を満たす構造を探索した。次に、分子動力学シミュレーションにより得られた初期構造を基に、QM/MM計算によりATP加水分解反応経路の探索を行った。まず、反応部位の結晶水分子は反応に大きく関わるものの、その配置に不定性があるため、様々な結晶水配置を持つ初期構造に関してQM/MM計算を行った。その結果、非常に安定なpre-hydrolysis中間状態を取る配置を見出した。その配置は、以前の計算のそれに比べて水分子の水素結合が多く、反応に不可欠なプロトン輸送を容易にしていることがわかった。また、基底関数のテストにより、以前になされた同様の計算よりも大きな基底関数が必要であることを明らかにした。また、タンパク質環境の熱揺らぎの効果を取り入れる手法も開発した。一方、εサブユニットについては、ATP結合による構造変化をモデリングするために、ATP結合状態および非結合状態におけるX線溶液散乱を測定した。その結果、ATP非結合状態では結合状態と違い、構造がかなり開いていることが明らかになった。
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