本年は、研究計画最終年度にあたり、これまでの成果をまとめることに注力した。具体的には、F1ATPaseの反応スキームのうち、明らかになっていなかった無機リン酸の解離反応がいつ起こるかを実験的に明らかにした(Nat.Chem.Biol.6.2010)。これにより、F1ATPaseの反応サイクルほぼ全てを決定することに成功した。次に、F1ATPaseの新しい回転トルク計測法を開発した(Phys.Rev.Lett.104.2010)。これは、Fluctuation theoremという古くから知られている理論を実際の実験に応用できることを証明し、それにより、F1ATPaseの回転のゆらぎから直接回転トルクを計測できることを示した。次に、新規な暗視野顕微鏡システムを開発した(Biophys.J.98.2010)。これは、エバネッセント照明を利用した暗視野顕微鏡システムで、画像のS/Nが改善されたことにより、最大9マイクロ秒オーダーの撮影が可能となっている。これまでの生物試料を対象とした高速撮影は100マイクロ秒オーダーであったため、大幅な時間分解能の向上を達成した。これら以外にも、現在投稿中の成果が2つ有り、投稿予定のものもいくつかある。
|