研究概要 |
本研究では、細菌べん毛のトルク発生ユニットの構造基盤を明らかにすることを目的と、固定子蛋白質(PomA、PomB、MotX,MotY、MotA、MotB)と、固定子と直接相互作用する回転子蛋白質FliGの原子レベルの構造決定を目指している。また、FoFlシステムとの類似が明らかになったべん毛輸送装置構成蛋白質の構造と作動機構の解明にも取り組んでいる。本年度の主な成果は、以下の通りである。 ・結晶化を進めている好熱細菌由来の回転子蛋白質FliGのうち、右方向にしか回転できないCWミュータントのMCドメインの結晶化に成功した。大型放射光施設SPring8において、2.3Åの回折データを収集に成功した。 ・サルモネラ菌由来MotBペリプラズムフラグメントの結晶化を行い、長さの違う2種類のフラグメントの結晶化に成功した。大型放射光施設SPring8において、それぞれ2Åと2.3Åの回折データの収集に成功した。 ・無細胞系を用い、MotAおよびMotBの膜貫通領域をGST融合蛋白質として発現し、可溶性画分として発現することに成功した。また、大きな可溶性ドメインを持つ全長MotBを無細胞系を用いて発現したところ、60%以上が可溶性画分に回収できることを見出した。これにより、Mot複合体の再構成、Mot複合体の結晶化への道筋が開けた。 ・べん毛輸送装置の輸送駆動力がATP加水分解エネルギーではなく、水素イオンの濃度差であることを明らかにした。このことから輸送装置とFoF1システムの類似性は、Fi部分だけでなく、水素イオン透過に関わるFo部分にまで広がる可能性が出てきた。
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