研究概要 |
本研究では、固定子蛋白質(PomA、PomB、MotX, MotY、MotA、MotB)と、固定子と直接相互作用する回転子蛋白質FliGの原子レベルの構造決定を行い、細菌べん毛のトルク発生ユニットの構造基盤を明らかにすることにより、分子モーターの構築・回転機構の解明を目指している。また、F_0F_1システムとの類似が明らかになったべん毛輸送装置構成蛋白質の構造と作動機構の解明にも取り組んでいる。本年度の主な成果は、以下に記す。 好熱細菌由来の回転子蛋白質FliGは、MCドメイン間の3残基が欠失すると右方向にしか回転できなくなる(CWミュータント)。このミュータントのMCドメインの2.5A分解能の構造解析に成功した。正常なFliGとドメインコンフォメーションが著しく変化していた。 サルモネラ菌由来MotBペリプラズムフラグメントの1.7A分解能での構造解析に成功した。この構造モデルは、MotBがモーター機能を発揮するために必要なペリプラズム領域を全て含んでいる。この構造と構造に基づく変異体解析から、ペリプラズム領域での2量体形成が、膜内の水素イオン透過に関わるヘリックスの配置に決定的な役割を果たすことが明らかになった。また、MotBがモーターに組み込まれる際に大きな構造変化を起こすこと、水素イオン透過性がこの変化と連動することが示唆された。 MotAのFliGに対する相互作用領域の発現に成功した。 べん毛輸送装置構成蛋白質FliJの1.9A分解能での構造解析に成功した。FliJはF_1ATPaseのγサブユニットの構造に酷似しており、これまでのFliIの構造解析結果と併せて、輸送装置の細胞質領域はF_1ATPaseと同様の構造と作用機構を持つ可能性が示唆された。
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