本研究課題の目標は、独自の光学顕微鏡技術を開発することで、膜超分子モーター(主にFoF1-ATPase)の作動原理について1分子のレベルで解明することである。2010年度においては、受像偏向という新しい顕微鏡技術の特許を取得し、これを実装するための顕微鏡開発を行った。研究者のグループでは、蛍光プローブの角度を高精度で検出する方法として、励起光の偏光を時間と共に回転する全反射型蛍光顕微鏡を開発してきた(2004年に特許を取得)。しかしこの方法では、得られる信号の位相のずれの解析から角度を決定する必要があるため、測定中に角度の絶対値が分からないという問題点があった。新しい顕微鏡では、絶対角度がそのまま非対称な図形として表示されるので、例えば顕微操作といった新しい技術をすぐに組み合わせることができる。もともとは蛍光1分子を観察対象に想定した技術であったが、量子ドットの検出に用いたところ、測定可能なシグナルを検出することに成功した。今後は分子モーターへの応用が期待される。また前年度の研究の延長として、3次元を測定する手法を分子モーターへ応用した。主に回転分子モーターF1-ATPaseを対象にし、このタンパク質のサブユニットを解体するのに必要な力の測定を行った。レーザーの強度だけを変化させ、時間と共に増加するような負荷を発生させる測定方法を確立した。
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