研究概要 |
細胞質雄性不稔性は雄性配偶子の特異的退化現象で、遺伝学的には雄性不稔原因遺伝子と稔性回復遺伝子の間に相互作用があるものと考えられる。申請者はテンサイを材料に用い、雄性不稔原因遺伝子と稔性回復遺伝子の機能や相互作用を中心に据え、ミトコンドリアや表現型に与える影響を明らかにする。また、有害な突然変異が配偶体を通じて次世代に遺伝する機構についても調査する。主な成果は以下の通りである。 1. CMS株由来培養細胞を用いた実験系により、Rf1の機能を調査した。培養細胞にRf1を導入すると、preSatp6翻訳産物で構成される分子量の小さなホモ多量体が出現する。ミトコンドリアタンパク質の二次元電気泳動により、この中にRF1とpreSATP6が含まれることを明らかにした。さらに、抗preSATP6抗体を用いた免疫沈降実験により、両者がタンパク質レベルで相互作用することを明らかにした。 2. CMS株におけるミトコンドリア機能を調べるため、preSatp6が発現している根よりミトコンドリアを単離し、酸素電極を用いて呼吸活性を調査した。その結果、state3においてCMS株の呼吸速度が速いという結果を得た。 3. 高等植物のRNAポリメラーゼ(pol I,IIおよびIII)触媒サブユニットをコードする遺伝子に関するヘテロ接合変異株では, RNAポリメラーゼの活性(転写活性)が機能型の当該遺伝子を喪失した雄性配偶体においても保持されることを組織化学的手法によって突き止めた。
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