研究概要 |
テンサイでは,花粉稔性回復における最初のステップがタンパク質間相互作用のレベルで生じていることを前年度までに明らかにしてきた.CMS原因遺伝子preSatp6と稔性回復遺伝子Rf1の相互作用についてさらに調査を進めた.育種で広く用いられるrf1アレルは機能遺伝子であるが,培養細胞を用いたアッセイではCMS原因遺伝子との相互作用は検出されず,preSATP6複合体の分子量は変化しないことがわかった.そこで,Rf1とrf1のキメラ遺伝子を作成し,相互作用を規定する領域,すなわちRf1のアイデンティティー決定領域を探索した。その結果,これまでに作成したいずれのキメラ遺伝子も相互作用能力を失っていることが明らかになり,単一の領域にアイデンティティーを求めることはできないことがわかった.一方,テンサイRf1やrf1は複対立遺伝子系であるので,多様なアレルについてCMS原因遺伝子との相互作用を検討した.その結果,アミノ酸配列が少しずつ異なるアレルが,相互作用の有無により二分されることがわかった.このうち,相互作用を行うアレルの見つかる頻度の方が高い.相互作用を行うアレルと,行わないアレルのアミノ酸配列を比較解析することで,何らかの情報が得られると期待される. ホウレンソウの雄性決定遺伝子(Y)近傍領域のAFLPマーカーマッピングを行った結果,Yを含む13.4cMの領域に12個のマーカーがマップされた.今後は,本実験で同定されたY連鎖AFLPマーカーのSTS化および雄株ゲノムBACライブラリーの構築を行う.
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