研究概要 |
(1)ミトコンドリアをGFPで可視化したシロイヌナズナに変異原処理をした後代から,ミトコンドリアの形態が異常になる突然変異系統を得た.原因遺伝子のマッピングにより,植物界に特異的に存在する新規遺伝子の5種のアリルを単離した.突然変異体に野生型のアリルを導入すると,表現型が回復したことから,この遺伝子をミトコンドリアを長大化させる遺伝子ELM1と命名した.さらに,酵母ツーハイブリッド解析,およびBiFC実験によって,この遺伝子産物が,すでにわれわれが同定していたミトコンドリアの分裂装置であるDRP3と結合する事が明らかとなった.DRP3突然変異体ではELM1タンパク質は正常にミトコンドリアに局在した.逆にELM1突然変異体では,DRP3タンパク質のミトコンドリアへの移行が阻害された.また,DRP3突然変異体において,エストロゲンで一過的にELM1遺伝子を発現させて経時的に観察したところ,長大化したミトコンドリアにDRP3が局在し,ミトコンドリアが分裂して,粒状化した.以上の結果から,ELM1は,分裂装置DRP3をミトコンドリアにリクルートするタンパク質であることが明らかとなった. (2)卵およびタペート特異的プロモータで各種蛍光タンパク質を発現させるコンストラクトを作製し,イネおよびシロイヌナズナを形質転換した.また,ミトコンドリアが長大化したシロイヌナズナの突然変異系統に変異原処理をおこない,ミトコンドリア融合に関与する遺伝子のスクリーニングを開始した.今後は,これらの系統を用いて,ミトコンドリアの融合分裂の生殖における役割を明らかにする.
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