研究概要 |
(1)タペート,花粉の生殖細胞,卵でそれぞれ特異的に発現するプロモータにミトコンドリア局在型のKaedeを連結し,イネおよびシロイヌナズナを形質転換した.得られたそれぞれの形質転換体は,意図したとおりタペート,生殖細胞,卵でKaedeを発現していることを確認した.今後,タペートについては,花粉形成の各段階でミトコンドリアの動態を観察し,特にタペート崩壊時におけるミトコンドリアの挙動を明らかにする.また,得られた形質転換体を利用して,花粉管の発芽,伸長と受精時におけるミトコンドリアのダイナミクスを明らかにする予定である. (2)通常,植物の体細胞でのミトコンドリアの形態は小型・粒状である.一方,ゼラニウムとトウモロコシにおいて,卵細胞ではミトコンドリアが巨大な釣鐘状・環状であることがこれまでに報告されていた.本研究ではイネ卵細胞ミトコンドリアの形態,特徴を明らかにするため,生きた状態で単離したイネ卵細胞を用いてミトコンドリアとmtDNAを同時に染色して観察を行った.その結果,イネの卵細胞ミトコンドリアは体細胞と同様に,小型・粒状の形態を取っていることが明らかになった.また,mtDNAの染色結果から,イネ卵細胞ミトコンドリアは大量のmtDNAを保持していることがわかった. (3)イネのミトコンドリアリボソームタンパク質の網羅的な解析の過程で,動物や菌類には存在しない植物特異的な遺伝子を同定した.この遺伝子についてシロイヌナズナを材料として機能解析をおこなったところ,雄性配偶子の形成に必須の遺伝子であることが判明した.今後は,この遺伝子を利用して,花粉形成とミトコンドリアの機能との関連を明らかにしたい.
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