研究概要 |
シロイヌナズナおよびイネについて,タペート細胞特異的発現を示すシロイヌナズナA9遺伝子およびイネOsg6B遺伝子の転写調節領域およびミトコンドリア,プラスチド,ペルオキシソーム,細胞膜にそれぞれ局在する蛍光タンパク質Kaedeを用いて,タペート細胞のオルガネラを特異的に可視化した植物体を作製し,固定包埋せず共焦点レーザー顕微鏡を用いて生育ステージを追って菊を観察した.その結果,花粉形成過程のシロイヌナズナおよびイネにおいて,タペート細胞が正常な形態のオルガネラおよび細胞膜を保持したまま,葯室内の花粉粒の間にアメーバ状に陥入していくことがわかった.これまで,イネ,シロイヌナズナはともに,他の多くの被子植物と同様にタペート細胞が葯室周縁に留まる分泌型タペートを有していると考えられてきた.しかし本研究の結果から,これら分泌型タペートと考えられてきたシロイヌナズナおよびイネのタペート細胞が,崩壊に先行して細胞自体が葯室内へ陥入していく侵入型のタペートであることが明らかとなった,イネ雌性配偶体を構成する各細胞は,正常な生殖および胚発生等に関して各々極めて重要な機能を持つと考えられている.本研究では,イネ雌性配偶体構成細胞の遺伝子発現プロファイリングにより各細胞の機能を解明することを目指し,まず卵細胞,助細胞をそれぞれ生細胞の状態で多数単離し,抽出したそれぞれのRNAを用いてマイクロアレイ解析を行った.その結果,シロイヌナズナ卵細胞および助細胞で高発現する遺伝子と相同性の高い遺伝子が,イネ卵細胞および助細胞においても高発現していること,およびプロモーター発現解析の結果から,本研究におけるマイクロアレイ解析には高い信頼性があることが示された.
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