計画研究
lec変異体は、胚が発芽後植物の性質を一部示すことから異時変異体として位置づけられる。lec変異体胚において顕著に異時発現する発芽後プログラム遺伝子の1つ、PYK10の発現をGFPおよびCFPレポーターにより追跡しエピジェネティック制御の関与を示唆してきた。両レポーターを同時に変異体に導入すると、GFPとCFP発現細胞は、多くの場合重なったが、どちらかだけの細胞も観察された。よって、PYK10そのものと上流因子の両方にエピジェネティックな発現抑制がかかっていると推察された。イネ(Oryza属)の種間交雑では、しばしば胚乳の崩壊と胚の巨大化が観察される。無胚乳変異体enl1も類似した表現型を示す。これまでにenl1の異常は、多核期の染色体分離の異常によることや、ENL1はSNF2/helicaseドメインを持つタンパク質であることを示した。本年度、ENL1の細胞内局を調べたところ、間期には細胞質に存在し、分裂期では染色体上に局在するようになることがわかった。さらに娘染色体間を結ぶ糸状の構造にも局在が見られ、動物で言われているPICHスレッドに相当するものと考えられた。また、enl1の植物体での表現型を詳細に調べた。その結果、根の伸長等にも異常が見つかり、伸長の停止した根の根端では、核分裂の異常やその結果と思われる分裂組織の喪失と分化や細胞死が観察された。しかし、根端に見られる異常の程度は胚乳における場合に比べてかなり軽いものであった。一方、シロイヌナズナのオルソログCHR24の変異体では、一部胚乳核の巨大化が認められたが、enl1変異体の様な胚乳における劇的な表現型は認められず、植物体の生育も正常であった。これらのことから、イネ(穀類)が胚乳核の急激な増殖を通して巨大な胚乳を作るように進化した結果、ENL1が胚乳形成(=生存)に必須な遺伝子となった可能性が考えられた。
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Genetics
巻: 189 ページ: 83-95
Plant Cell Physiol
巻: 51 ページ: 2031-2046
植物の生長調節
巻: 45 ページ: 140-143
http://www.agr.nagoya-u.ac.jp/~gaikan/hattori.html