アブラナ科植物の初期受粉過程における生殖障壁の実体解明を目的として以下の研究を行った。 (1)「和合シグナル」検出系の確立とシグナル分子性状解析 [Ca^<2+>]センサー色素を柱頭に塗布してから受粉させる実験系により、花粉表層物質中にはCa^<2+>を含む水の流出を誘導する何らかの「和合シグナル」が含まれることが示された。この活性は、花粉表層物質を加熱処理あるいは蛋白質分解酵素処理により消失することが示され、タンパク性の物質の関与が示唆された。本活性物質の分子性状をさらに解明するために、アブラナ科植物の花粉表層物質の大量調製法の検討を開始した。また、シロイヌナズナの花粉表層物質中にも、同様の活性物質の存在が確認された。 (2)「和合シグナル」により誘導されるの水輸送経路の解明 上記により、「和合シグナル」は乳頭細胞から花粉へのCa^<2+>を含む水の供給を調節することが示唆された。この調節機構を明らかにするために、まず、アクアポリン阻害剤HgCl_2で乳頭細胞を前処理したところ、花粉表層物質処理時の水の流出が抑制されることが示され、この調節にアクアポリンの関与が示唆された。さちに、発現解析により、乳頭細胞で高発現のPIP分子種の探索を行った。さらに、乳頭細胞で高発現の複数のPIP分子種についてタグラインの表現型解析を行ったが、受粉過程における異常は観察されなかった。複数のPIP分子種が相補的に機能している可能性が示唆された。
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