1.「和合シグナル」の分子性状解析 Ca^<2+>センサー色素を含ませた微小ビーズを用いた新アッセイ法により、「和合シグナル」活性には、花粉表層物質の脂溶性画分と水溶性画分の両者が必要であることが示された。「和合シグナル」と自家不和合性シグナルの関係を追求するために、Arabidopsis thaliana C24株にSRKとSP11を導入して自家不和合性を付与させた。さらに本株の乳頭細胞にYellow cameleonを発現させて不和合受粉時のCa^<2+>挙動を解析したところ、細胞外へのCa^<2+>流出抑制が再確認されると同時に、細胞内Ca^<2+>は逆に上昇することが示された。 2.「和合シグナル」により発現誘導される因子の網羅的解析 作出したSRK発現シロイヌナズナに、野生株の花粉とSP11発現花粉を受粉させ、和合および不和合受粉後の乳頭細胞内発現遺伝子の変動を、マイクロダイセクション-マイクロアレイ法を用いて解析した。和合・不和合受粉が決定する受粉初期の段階では遺伝子発現の差違はほとんど認められず、両受粉反応の決定には新たな遺伝子発現の変動は伴わない可能性が示唆された。 3.「和合シグナル」下流で機能する乳頭細胞内Ca^<2+>輸送体の解明 乳頭細胞外へのCa^<2+>流出に関わる輸送体を特定する目的で、上記マイクロアレイ解析データから乳頭細胞内で強く発現する輸送体候補を抽出した。本分子のC末端にGFPを繋いだコンストラクトを乳頭細胞内に発現させて挙動を調べたところ、和合受粉時にのみ花粉管直下の細胞膜周辺への集積が観察された。本分子のタグラインの解析を行ったところ、花粉を受粉させた際の吸水・発芽が遅延し、発芽率も低下する傾向が観察され、本分子が乳頭細胞外へのCa^<2+>流出を調節する輸送体である可能性が示唆された。
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