研究概要 |
[研究の目的] 本研究課題では、これまでに検出したイネ亜種間(ジャポニカ,インデイカ間)交雑後代に見られる生殖的隔離障壁因子の単離と機能解析を行う。生殖的隔離障壁は遺伝子間の相互作用によって引き起こされるため、相互作用する2つの遺伝子を一対として単離し、何時、どのように「ゲノム障壁」として働きうるのか、通常は親系統の中でどのような機能を果たしているのか、などの解明を行う。平行して、イネ生殖細胞の初期発生過程の遺伝的制御の解析にも取り組む。これらの研究を通じて、生殖過程の中で、ゲノム間の遺伝子変異により生じる障壁の構造、機能、進化の実態を明らかにし、植物進化や多様性との関連について解析することを目指す。 [平成18年度の成果] ・イネ第3染色体上の花粉受精競争に関与すると思われる生殖的隔離障壁遺伝子は、2系統(染色体6番の遺伝子型の異なるもの)に4種類の候補遺伝子を導入して、形質転換体の自殖後代における導入遺伝子の伝達頻度を検定し、「ゲノム障壁」確認の最終段階である。また、第3染色体の遺伝子とペアで機能する第6染色体上の相互作用遺伝子の精密マッピングを進め、候補遺伝子を80Kbまでに絞り込んだ。 ・2組目の生殖隔離遺伝子対である、第1と第6染色体のマッピングを進め、それぞれ72Kb,540Kbの領域に絞り込んだ。さらにバッククロスによる相互作用解析から、これらの遺伝子が雄性生殖細胞で障壁を形成する事がわかった。 ・始原生殖細胞形成過程の解析は、関与すると考えられる3種の遺伝子から発生プログラムを解いて行く予定であり、うち1つについてin situの発現解析、マイクロアレイ解析などを行い、発生プログラムにおける機能を探る作業を進めている。
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