研究概要 |
本研究課題では、イネ亜種間(ジャポニカ,インディカ間)交雑後代に見られる生殖的隔離障壁の単離と機能解析を行う。生殖的隔離は遺伝子間の相互作用によって引き起こされるため、相互作用する2つの遺伝子を一対として単離し、何時、どのステージで「ゲノム障壁」として働くのか、通常の生殖過程ではどのような機能を持つのかなどの解明を行う。これらの研究を通じて、生殖過程の中でゲノム間の遺伝子変異により生じる障壁の構造、機能、進化の実態を明らかにし、植物進化や多様性との関連について解析することを目指す。関連して、生殖細胞発生初期過程における特異的遺伝子の機能解析も行う。 今年度の成果は、 1、イネ第3染色体上の花粉受精競争に関与すると思われる隔離障壁因子PAZ-domainタンパク遺伝子は、カサラス対立遺伝子が積極的に受精に与って次世代に高頻度で伝わることが分かり、日本晴対立遺伝子は機能喪失型であると推察された。相互作用遺伝子も1遺伝子に絞り込んだ。 2、2組目の生殖隔離遺伝子対は、クローニングの結果第1と第6染色体にある機能未知の相同遺伝子どうしで、日本晴とカサラスで異なる染色体上の遺伝子がそれぞれ機能欠失型になっているため、半数体花粉での障害を引き起こすと推察された。 3、生殖胞発生初期過程で特異的に機能するイネMEL1遺伝子について、突然変異体のマイクロアレイ解析を行い、MEL1が生殖細胞発生過程に不要な遺伝子の発現を抑制している可能性が見えた。 これらの結果に基づき、今後は(1)染色体3と染色体6の遺伝子の相互作用を細胞、組織学的に検証し、(2)2番目の例では、重複遺伝子の相補性試験による確認を、(3)生殖細胞初期発生に関わるMEL1では、これがArgonaute遺伝子のひとつであることから、どのようなRNAをターゲットとしているかについての解析を進める。
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