胚乳では、母親側から遺伝したか、父親側から遺伝したかに従って、片親性の発現パターンを示す遺伝子がシロイヌナズナからいくつか同定されている。本研究では、こうしたゲノム情報のエピジェネティックなプログラミング過程を明らかにすることにより、胚乳発生過程におけるゲノム障壁、特にエピジェネティックなゲノム障壁の機構を明らかにすることを目的としている。 今年度はシロイヌナズナFISH遺伝子がDNAメチル化によりゲノムインプリンティング(胚乳での母親由来アレルの特異的発現)を受けるメカニズムを明らかにした(Jullien PE. et al. 2006 Plant Cell 18: 1360-72)。FISH遺伝子は、すでに制御機構の明らかになっているインプリント遺伝子FWAと同様に、プロモーター領域のDNAメチル化に依存して父親アレルが発現抑制される。一方で、母親アレルはDNA glycosylase活性を持つDEMETERに依存して活性化されることが明らかになった。 また、FWA遺伝子のゲノムインプリンティングの制御に必要な領域を同定した(Kinoshita Y. et al. 2007 Plant J. 49: 38-45.)。FWA遺伝子の5‘領域にはレトロトランスポゾン(SINE)由来と考えられるタンデムリピートが存在する。このタンデムリピートのメチル化の状態が、インプリントされたFWAの遺伝子発現を決定することを2本鎖RNAを導入し実験的に証明した。
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