オートファジーによるオルガネラの分解は、多様な環境条件下で誘導されることが明らかとなりつつある。本申請者らはメタノール資化性酵母を用いたさまざまな炭素源培養条件においてオートファジーやその基盤となる因子の同定および機能解析を進め、現在までに約30の関与因子群を見出している。本年度の研究では、昨年度に本特定領域研究過程において見出された、メタノール誘導性のオートファジーに関連する因子の解明を重点的に行った。具体的にはメタノール資化性酵母Candida boidiniiにおいて新たな遺伝子破壊およびその破壊遺伝子同定システムの構築を行い、その技術を用いてメタノール培養時特異的に転写誘導をもたらす因子としてTrm1を同定した。またメタノール誘導性のオートファジーにより液胞へ輸送される標的タンパク質として、アミノペプチダーゼ1とグルコキナーゼを見出した。これら標的タンパク質の輸送に関与するオートファジー(ATG)遺伝子群には2つのグループがあることから、メタノール誘導性のオートファジーに2つの様式があることが明らかとなった。この結果は出芽酵母において研究されている飢餓時と栄養増殖時の2つの環境条件下でのオートファジー様式の差異とも比較しうるものであり、栄養条件とオートファジー誘導との連関を知る上で興味深い結果である。また、メタノール培養後の炭素源変換により誘導されるペルオキシソーム分解(ペキソファジー)誘導時に見られる複数の膜動態に関わる因子として、PpAtg11とPpAtg18を見出した。これらの因子の詳細な機能解析を現在行っている。
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