計画研究
ユビキチン修飾系は、時空間的な特異性を持って基質タンパク質を識別して次々ユビキチンを付加することでポリユビキチン鎖を形成し、タンパク質の機能を制御する。生体には種々のポリユビキチン鎖が存在し、ポリユビキチン鎖の種類によりタンパク質の制御様式が異なることが明らかになっている。従来は、ポリユビキチン鎖はユビキチンのリジン残基を介してのみ生成されると考えられてきたが、研究者らはユビキチンのN末端のメチオニンを介した直鎖状ポリユビキチン鎖が生成されること、直鎖状ポリユビキチン鎖はNF-κBの活性化に関与することを報告してきた。本研究では、研究者らが新規に同定した直鎖状ポリユビキチン鎖を形成するE3であるLUBAC複合体をモデル系としてポリユビキチン鎖の生成機構の解析を進めているが、本年度は直鎖状ポリユビキチン鎖を選択的に生成するユビキチンリガーゼの構造についての進展があった。これまで、直鎖状ポリユビキチン鎖はHOIL-1LとHOIPの2種のタンパク質によって構成されると考えられてきたが、研究者らは新規構成タンパク質としてSHARPINを同定した。さらに、SHARPINは慢性皮膚炎や種々の免疫異常を呈する自然変異マウスであるcpdmマウスの責任遺伝子として同定されており、cpdmマウスではNF-κB活性化が減弱することで上記のような多彩な症状を呈することを明らかにした。すなわち、直鎖状ポリユビキチン化HOIL-1L、HOIP、SHARPINの3種のタンパク質から構成されるLUBACユビキチンリガーゼはNF-κB活性化の中核を担うタンパク質複合体であることを明瞭に示した。また、直鎖状ポリユビキチン鎖のウイルス感染における役割についても解析を進め、直鎖状ポリユビキチン鎖はType Iインターフェロン(インターフェロン-α、-β)の産生を抑制することも示した。
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Molecular Cell
巻: 41 ページ: 354-365
Nature
巻: (In press)
http://www.cellbio.med.osaka-u.ac.jp/