研究概要 |
ユビキチン代謝酵素の異常は神経変性疾患やがんなどの難治性疾患の病態と深く関連しているため、その個体高次機能の解析は欠かせない。本計画研究ではユビキチン代謝酵素の遺伝子改変動物を作製し、その遺伝学的な個体高次機能解析を通じてユビキチンによるタンパク質翻訳後修飾機構の生理的役割解明と難治性疾患の病態理解に貢献することを目的とする。 本年度は、様々な生命現象に関わることが知られる複合体型ユビキチンリガーゼ(Cullin型ユビキチンリガーゼ)について、これと相互作用する脱ユビキチン化酵素および新規タンパク質をそれぞれ学会報告し、その遺伝子改変動物の作成と解析を開始した。またCullin型ユビキチンリガーゼの活性制御に重要であるNEDD8翻訳後修飾機構について、NEDD8もユビキチン分子と同様にポリNEDD8鎖を形成しうること(BBRC,2009)、その制御に関わる新たな候補因子を学会報告した。Cullin型複合体はE3ユビキチンリガーゼの大半を占め、多くの生命現象の制御に関与することが知られるが、その活性制御機構はまだ解明されていない。多くの生命現象および病態の解明に、Cullin型ユビキチンリガーゼの活性制御機構の理解は必須であり、E3活性と拮抗する脱ユビキチン化酵素との相互作用、そしてユビキチン様分子による修飾などは、その解明の糸口として注目されている。その中で、新たな制御因子の同定およびユビキチン様分子のポリ鎖形成を報告した意義は大きい。
|