カルパインによる生体のモジュレーション

2010 年度 実績報告書

• 研究領域: タンパク質分解による細胞・個体機能の制御
• 研究課題/領域番号: 18076007
• 研究機関: 財団法人東京都医学研究機構
• 研究代表者: 反町 洋之 財団法人東京都医学研究機構, 東京都臨床医学総合研究所, 参事研究員 (10211327)
• キーワード: カルパイン / 胃腸 / 酵素 / 蛋白質 / プロテオリシス / カルシウム / メンブレン・トラフィック / 骨格筋

研究概要

カルパインは細胞質内に存在し、Ca^<2+>-シグナリングに呼応して厳密に基質を認識して限定分解するモジュレータ・プロテアーゼである。ヒトの15のカルパイン遺伝子の中では、その約半数について、その変異により疾患・致死の生じることが明らかとなっている。よって、カルパインが生体の正常な維持に必須な酵素であることが明確となっている。ヒトのカルパイン不全による疾患には筋ジストロフィー、胃腸疾患などが含まれ、カルパインを標的とした診断・治療の期待が高まっている。一方で、カルパインの作用機序ついては未だにほとんどが不明である。そこで本研究では、カルパインの作用機序を個体、細胞、in vitroの各レベルから解析し、カルパイン不全による生体システム破綻のメカニズムを明確にし、カルパインが生体をモジュレートする分子機構の解明を目的とした。今年度は、最終年度としてこれまでの解析を終了させるべく、カルパイン及び関連分子の遺伝子改変マウスを利用して、詳細な解析を行った。筋特異的カルパイン(CAPN3)についてのノックイン及びノックアウト両マウスの比較解析の結果、CAPN3はプロテアーゼとして以外に筋小胞体において構造タンパク質としての機能も果たすことが示された。一方、胃腸特異的カルパイン(CAPN8及びCAPN9)については、ノックアウト及びノックインマウスを用いた実験の結果、胃粘膜防御に、両カルパインが複合体(G-カルパインと命名した)を形成して初めて機能することを明らかとし、さらにその酵素学的性質の解析を行った。

研究成果

• [雑誌論文] Dynamic distribution of muscle-specific calpain in mice has a key role in physical-stress adaptation and is impaired in muscular dystrophy (2010)
  • 著者名/発表者名: Ojima, K., Kawabata, Y., Nakao, H., Nakao, K., Doi, N., Kitamura, F., Ono, Y., Hata, S., Suzuki, H., Kawahara, H., Bogomolovas, J., Witt, C., Ottenheijm, C., Labeit, S., Granzier, H., Toyama-Sorimachi, N., Sorimachi, M., Suzuki, K., Maeda, T., Abe, K., Aiba, A., Sorimachi, H.
  • 雑誌名: J.Clin.Invest. 巻: 120 ページ: 2672-2683
  • 査読あり
• [雑誌論文] Calpain 8/nCL-2 and Calpain 9/nCL-4 constitute an active protease complex, G-calpain, involved in gastric mucosal defense (2010)
  • 著者名/発表者名: Hata, S., Abe, M., Suzuki, H., Kitamura, F., Toyama-Sorimachi, N., Abe, K., Sakimura, K., Sorimachi, H.
  • 雑誌名: PLoS Genet. 巻: 6 ページ: e1001040
  • 査読あり
• [雑誌論文] Skeletal muscle-specific calpain is an intracellular Na^+-dependent protease (2010)
  • 著者名/発表者名: Ono, Y., Ojima, K., Torii, F., Takaya, E., Doi, N., Nakagawa, K., Hata, S., Abe, K., Sorimachi, H.
  • 雑誌名: J.Biol.Chem. 巻: 285 ページ: 22986-22998
  • 査読あり
• [学会発表] Unique functions of mammalian unconventional calpains (2010)
  • 著者名/発表者名: Sorimachi, H.
  • 学会等名: FASEB Summer Research Conferences-The Biology of Calpains in Health & Disease
  • 発表場所: Carefree, Arizona, USA(招待講演)
  • 年月日: 2010-07-30
• [備考]
  • URL: http://www.igakuken.or.jp/calpain/