計画研究
本年度は、昆虫の嗅覚受容体について以下の成果がでた。まず、ショウジョウバエ、蚊、カイコなど昆虫の匂い受容体、フェロモン受容体の情報伝達機構の解明に取り組んだ。昆虫における嗅覚では、マウスの場合と異なり、匂いやフェロモンの受容体とOr83bファミリーの嗅覚受容体のヘテロダイマー形成がセンサー機能に必須である。詳細な信号発生メカニズムを解析したところ、昆虫嗅覚受容体ヘテロダイマーのセンサーを介した信号は、非選択的カチオンチャネル型であることがわかった。様々な阻害剤を用いた薬理学的解析を行ったところ、その信号の情報伝達にGタンパク質が関与していないことがわかった。電気的に非興奮性の哺乳類培養細胞を用いて、アウトサイドアウトモードのシングルチャネル記録をおこなった結果、複合体そのものがチャネルを形成しているということが強く示唆された。マウスと昆虫の嗅覚受容機構の違いは、種を超えたセンサー機能のモーダルシフトである。本成果は、Nature誌に発表した。一方、カイコ蛾のゲノム上に存在する嗅覚受容体遺伝子を探索したところ、70個の嗅覚・味覚受容体遺伝子がみつかった。それぞれの遺伝子がカイコ幼虫の鼻あるいはカイコ蛾の触角に発現しているかをRT-PCR法を用いて調べた。幼虫の触角に発現している嗅覚受容体のリガンド応答解析を行った結果、桑の葉由来の匂い成分に応答する嗅覚受容体を見出した。これらの結果は、同定したカイコ幼虫の匂いセンサーが餌である桑の葉に引き寄せられる行動に関与していることを示唆している。センサー刺激と個体の行動制御に関する成果である。
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Nature 452
ページ: 1002-1006
細胞工学 26
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Neurochemistry Internatl. 51
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http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/molecular-recognition/touhara/kyukaku.html