計画研究
本研究の目的は"触→痛"への応答変換に関与するセンサー分子群(伝達物質受容体、チャネル、トランスポーター、リン酸化酵素、脱リン酸化酵素など)の単離と、センサー機能のモーダルシフトによる触覚受容の病的変化のメカニズムを明らかにすることである。神経損傷モデルマウス脊髄標本のDNAマイクロアレイ解析の結果、末梢型ベンゾジアゼピン受容体(PBR)遺伝子の発現上昇が認められた。そこで神経損傷モデルマウスの髄腔内へPBR作用薬、拮抗薬を投与することによりPBRが神経損傷により誘導される"触→痛"への応答変換に影響を及ぼすかどうかを行動薬理学的に検討した。その結果PBR拮抗薬に"触→痛"への応答変換を阻害する働きがあることが明らかとなった。PBRはニューロステロイド合成系においてコレステロールをミトコンドリアへ輸送するトランスポーター分子であり、輸送されたコレステロールは代謝され最終的にアロプレグナノロン、テトラヒドロデオキシコルチコステロン(THDOC)が産生する。これら分子はGABA_A受容体を活性化することが知られている。通常GABA_A受容体は抑制性伝達に関与するが、神経因性疼痛時においてはカリウムークロール共役担体(KCC2)の発現低下による細胞内Cl-濃度の上昇によりGABA_A受容体が抑制性伝達に寄与できなくなる、さらには興奮性伝達に変換される可能性があるとの報告がなされた。以上のことからPBR発現上昇に伴なうニューロステロイド合成の促進がGABA_A受容体の活性化を誘導しそれにより"触→痛"への応答変換が引き起こされている可能性が示唆された。本年度はこの可能性の検討を含めPBRの発現上昇がどのようなメカニズムで"触→痛"への応答変換を引き起こしているのかを検討した。検討結果に関してはまだ詰めの段階で来年度早々に論文を投稿したいと考えている。
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Mol. Cell. Neurosci 34
ページ: 261-270
医学のあゆみ 233
ページ: 474-478
http://www.tmd.ac.jp/med/mphm/Yakuri.HTM