研究概要 |
ミドリムシの光行動の光センサーPACは、そのサブユニットであるPACαとPACβのそれぞれに光感受ドメイン(F1,F2)とcAMPを生成する酵素活性ドメイン(C1,C2)を持ち、それらの相互作用により青色光で活性化される。相互作用解析のために、アデニル酸シクラーゼの機能相補を行った。PACαとPACβの4つの機能ドメインを単位にN末端やC末端を欠失した種々の組換え蛋白質を発現するベクターを作製し、これらを単独あるいは2種類組み合せてアデニル酸シクラーゼ欠損大腸菌株に導入し、ラクトース代謝能のpH指示薬による検出で活性を判定した。C1ドメインとC2ドメインが共存することと、最低1つの発色団結合ドメインが存在することが、アデニル酸シクラーゼの活性に必須であった。しかし、大腸菌発現系では活性の光制御は実現しておらず、天然のPACの機能を十分に再現しているとは言えない。宿主の検討も含め、発現条件の最適化が今後の課題である。一方、PACを細胞工学的に任意の細胞に導入して光条件により細胞内cAMP濃度を人為的に変化させ,各種の生命活動をコントロールする「細胞機能光スイッチ」として応用する可能性については、ドイツグループとの5年の共同研究の成果として、アフリカツメガエル卵母細胞やヒト培養細胞さらにはショウジョウバエ個体においてこのような機能発現や行動の光制御の実現例を報告した。
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