研究概要 |
代謝環境センサーとして機能する核内受容体(VDR、LXMなど)のリガンド応答性の分子機構を、核内受容体の分子内・分子間相互作用や標的遺伝子の発現、そしてダイオキシン受容体(AhR)などの他の代謝センサーとの機構連関を解析することで検討した。代謝センサーの細胞・個体レベル(1,2)及び分子レベル(3,4)のモーダルシフトを明らかにした。 1.VDRシグナル系とAhRシグナル系の機能連関を解析した結果、単球・マクロファージ系細胞株において、VDRの活性化がAhRによる標的遺伝子CYP1A1の発現を促進することを見出した。環境生体異物BaPは、AhRを活性化し、誘導されるCYP1ファミリー酵素により不活性化または代謝活性化される。BaPと活性型ビタミンD3の併用処理により、CYP1A1の遺伝子・蛋白質発現、酵素活性が相乗的に増加し、BaP依存性DNAアダクト形成が増加した。VDRは、CYP1A1プロモーターに直接相互作用した。生体異物代謝におけるVDRの新規機能が明らかになった。 2.AhRの活性化は、実験条件によって、炎症反応を促進したり、抑制したりすることが報告されている。総胆管結紮(BDL)による胆汁鬱滞モデルマウスにおけるダイオキシンの効果を検討した。コントロールマウスにおいて毒性を示さない低濃度のダイオキシンの投与により、BDLによる炎症反応、肝細胞壊死が著明に増悪した。CYP1A1欠損マウスでは、この効果がさらに悪化した。BDL下において、AhRの活性化は、病態の増悪をまねくが、誘導されるCYP1A1は病態を抑制することが明らかになった。 3.蛍光共鳴エネルギー移動及びクロマチン免疫沈降などにより、VDR-コファクター相互作用を検討した。リガンド依存性の相互作用に細胞選択性があることが明らかになった。 4.オキシステロールの1α位誘導体が、リガンド依存的なLXR-コリプレッサー相互作用を誘導し、炎症性サイトカインの遺伝子発現を抑制することを見出した。 なお、マウス組織標本作製のため自動固定包埋装置を購入した。
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