研究概要 |
動物細胞はたとえ異常浸透圧環境下におかれて収縮・膨張を強いられたとしても、速やかに正常容積へと復帰する能力を持っている。Regulatory volume decrease(RVD)と呼ばれる浸透圧性膨張後の容積調節は細胞膨張後に細胞内Ca^<2+>膿度上昇が起き、それに引き続きKClの流出とそれに伴う水の流出によって達成される。しかしながら、RVD過程においてCa^<2+>流入経路として考えられている膜伸展刺激活性化カチオンチャネルの性質の詳細や分子実体については不明であった。今回私達は、ヒト上皮HeLa細胞におけるRVD過程に関与する膜伸展刺激で活性化するカチオンチャネル分子がMg^<2+>やGd^<3+>に感受性を示すTRPM7であることを発見した。さらにヒト上皮(HEK293)細胞に強制発現されたTRPM7クローンも、膜伸展刺激、細胞容積増大、により活性化すること発見した。 次に「メカノセンサーTRPM7と容積センサーVSORの機能協関と分子連関」の解明のために次の3点について実験的検討を行った。まず第1に、TRPM7をGdなどの阻害剤を用いて阻害した場合、VSORチャネルの活性を抑制することを明らかにした。第2に、TRPM7-siRNAでVSORの活性が抑えられることが判明した。TRPM7は、PIP2で制御されると報告がある。PIP2がTRPチャネルを活性化させる部位の候補として挙げられるのがTRPM8(Rohacs T, Lopes CM, Michailidis I, Logothetis DE. Nature neuroSci2005)で報告があるようにTRPチャネルのC末端領域のTRP-boxである。そこで第3に、TRPM7のC末端部位の高密度陽電荷領域(いわゆるTRP-box領域)の陽電荷を中性化してTRPM7の活性の変化を確認した。しかし、TRP-boxに変異を入れたものではTRPM7の活性には変化が見られなかった。プロテインキナーゼ領域および、zinc-finger motif領域にmutationを入れてVSORの活性(ホールセル電流)を調べたが、活性に変化が見られないことが判明した。
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