研究概要 |
細胞の増殖や移動などの生存メカニズムのみならず細胞死の誘導メカニズムにも本質的な役割を果たす細胞容積調節機構には、メカノセンサーとしての細胞膜伸展感受性カオチンチャネルと、容積センサーとしての容積感受性外向整流性アニオンチャネル(VSOR)の働きが重要な役割を果たしている。本研究では、容積センサーでもあり、時にはROSセンサーとしても働くアニオンチャネルVSORと、メカノセンサーでもあり、同時にオスモセンサーでもあると共にVSORレギュレータでもあるカチオンチャネルTRPM7の多機能性とその動作変換の分子基盤、分子連関を解明することを目的とする。平成20年度はまず第1に、TRPM7のボア領域の4個の負電荷アミノ酸(アスパラギン酸Asp(D)とグルタミン酸Glu(E))を1つ1つ中性アミノ酸アラニン(A)に置換する点変異(E1047A, E1052A, D1054A, D1059A)させてチャネル電流を観察したところ、Asp-1054がプロトンセンサーとして働き、酸性下ではTRPM7はプロトンチャネルへとモーダルシフトすることをはじめて明らかにした。第2にTRPM7の選択性フィルター部位に存在するAsp-1054とGlu-1052がCa^<2+>とMg^<2+>に対する結合サイトを与え、そのうちAsp-1054の方が二価カチオン伝導性を決定することを明らかにした。第3に、VSORの容積センサーシグナル機序の検討を行い、これまで示唆されてきたRas-Raf-MEK-ERK経路、PI3K-NADPH oxidase(NOX)-H_2O_2経路、Scr-PLCγ-Ca^<2+>経路のいずれもが容積センサー機序に直接関与するものではないことを明らかにした。第4に脳アストロサイトは炎症性メディエータであるブラジキニン刺激によってアストロサイトはROSを産成し、このときVSORは容積センサーからROSセンサーへとモーダルシフトして活性化され、グルタミン酸放出通路を与え、近隣ニューロンにCa^<2+>を伝達することを証明した。
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