細胞の増殖や移動などの生存メカニズムのみならず細胞死の誘導メカニズムにも本質的な役割を果たす細胞容積調節機構には、メカノセンサーとしての細胞膜伸展感受性カオチンチャネルと、容積センサーとしての容積感受性外向整流性アニオンチャネル(VSOR)の働きが重要な役割を果たしている。本研究では、容積センサーでもあり、時にはROSセンサーとしても働くアニオンチャネルVSORと、メカノセンサーでもあり、同時にオスモセンサーでもあると共にVSORレギュレータでもあるカチオンチャネルTRPM7の多機能性とその動作変換の分子基盤、分子連関を解明することを目的とする。今回は次の4点を明らかにした。(1)容積センサーVSORの活性化に、ABCF2-ACTN4相互作用が関与していることを明らかにしていたが、その作用部位がABCF2のアミノ末端にあることを明らかにした。(2)VSORがブラジキニン刺激下でROSによって活性化されるというROSセンサーへのモーダルシフトに、ストア作動性Ca^<2+>チャネル開口部からおよそ20nm以内に形成されるCa^<2+>ナノドメインという高Ca^<2+>濃度領域におけるPKC活性化とそれによるNOXの活性化が関与することを明らかにした。(3)脳内オスモセンサーAVPニューロンは、低浸透圧時には膨張してAVPの神経終末での分泌を抑制するが、細胞体や樹状突起ではその分泌を高め、V2型レセプターを介してVSOR活性を高めて、膨張後の細胞容積調節RVDを促進する役割を果たすことを明らかにした.(4)TRPM7はVSORと機能協関してRVDを実現されるが、標的組換が効率的に起こるトリBリンパ球DT細胞においてTRPM7遺伝子をノックアウトするとVSOR活性もほぼ完全に消失し、これにTRPM7遺伝子をノックインするとTRPM7のみならずVSORの活性もレスキューされ、TRPM7とVSORは分子的にも連関していることを明らかにした。しかしTRPM7ノックアウト後も、ごくわずかのVSOR活性が残存するので、TRPM7分子は夫だ分子同定されていないVSOR分子そのものではないことが結論された。
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