研究概要 |
申請者は昨年度,脳内パトロール細胞であるミクログリアのATPセンサーP2Y6受容体が,脳卒中等の傷害時に発現が亢進し,神経細胞を貪食してよいかどうかを決定するセンサーとして機能することを証明し,傷害神経細胞-グリア細胞連関で重要な役割を果たすことを示してきた。本年度は,以下の2点(1)ミクログリア貧食センサーP2Y6受容体発現調節の分子メカニズム,(2)P2Y6受容体の他のグリア細胞における発現及び機能,他のグリア細胞,について検討を行った。(1)ミクログリアのP2Y6受容体発現調節。静止型ミクログリアのP2Y6受容体発現は非常に少ない。ところが脳虚血等の神経細胞傷害時にはその発現が亢進する。カイニン酸(KA)処置による脳傷害時に,TGF-betaの発現が亢進すること,またTGF-b依存的にミクログリアP2Y6受容体mRNA及び蛋白発現が亢進し,貪食作用が開始されることを明らかとした。アストロサイトにも存在すること,また脳の炎症時に発現が亢進し,することを明らかとした。LPS等の最近感染をmimicしたモデルではP2Y6受容体発現はむしろ低下した。(2)アストロサイトP2Y6受容体。アストロサイトも通常は殆どP2Y6受容体を発現していなかった。ところが,LPS刺激により,その発現は劇的に亢進した。アストロサイトP2Y6受容体は貪食能を示さなかったが,アストロサイトの飲食能(pinocytosis)を呈した。以上,P2Y6受容体は,通常グリア細胞における発現は低いが,虚血性傷害(ミクログリア)及び炎症性傷害(アストロサイト)により発現が亢進し,それぞれ貪食及び飲食作用を制御していることが明らかとなった。
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