研究概要 |
新生仔マウスの表皮を野生型マウスとTRPV4欠損マウスで比較したところ、TRPV4欠損マウスで角化層が顕著に厚くなっていた。新生仔マウスを色素truidin blueに浸したところ、アセトンで角化層を除去した場合、TRPV4欠損マウスでより多くの色素沈着が観察された。皮下にビオチンを注入して漏出を観察したところ、野生型マウスではビオチンの漏出はtight junctionで完全に止まったが、TRPV4欠損マウスではtight junctionを越えて漏出した。さらに、trans wellにマウスケラチノサイトを培養してFITCデキストランの透過を検討したところ、野生型マウスに比べてTRPV4欠損マウスで有意に透過性が亢進していたことから、TRPV4は表皮ケラチノサイトのtight junctionを介したバリア機能に関与しているものと結論した。これを裏付けるように、マウス皮膚の電子顕微鏡での観察から、TRPV4欠損マウスでは細胞接着構造の乱れが観察された。マウスケラチノサイトを培養して培養液にCa^<2+>添加して観察したところ、細胞の接着、重なり、アクチン線維の発達等がTRPV4欠損マウスで有意に遅れることが観察された。 TRPA1をHEK293細胞に発現させて細胞外アルカリ刺激やアンモニウムクロライド刺激を行ったところ、細胞内Ca^<2+>濃度の上昇が観察され、この応答はTRPV1,TRPV2,TRPM8では見られなかった。これらの刺激では細胞内がアルカリ化していることが明らかとなり、また、種々の電気生理学性質が他の刺激によるTRPA1活性化と同様であったこと、およびパッチ膜だけの状態での単一チャネル電流が細胞内からのアルカリ刺激で観察されたことから、細胞内アルカリ化によってTRPA1が活性化されることが明らかになった。マウス足底へのアンモニウムクロライド投与でもTRPA1発現依存的に痛み関連行動が観察されたことから、細胞内アルカリ化はTRPA1活性化を介して痛みを引き起こしていることが明らかとなった。
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