研究概要 |
電位センサードメインが酵素ドメインと共役する機構を明らかにするため、発現系細胞と2種類のVSP分子を用いて以下の解析を行った。 (1)アフリカツメガエル卵母細胞にPH-ドメインGFPとCi-VSPを共発現させ、膜電位固定下にて共焦点蛍光顕微鏡による蛍光イメージングを行った。脱分極に伴いPLC-delta由来PHドメインGFPのシグナルは減少し、過分極に伴い増加した。またBtk由来PHドメインGFPを用いてPtdIns(3,4,5)P3のイメージングを行った結果、PtdIns(4,5)P2と同様に脱分極に伴い減少し、過分極に伴い増加した。脱分極時でのPtdIns(4,5)P2の減少の程度を確認するため、GIRK2チャネル、IRK1チャネル、KCNQ2/3チャネルをそれぞれCi-VSPと共発現させ電流測定により各イオンチャネルの活性が減衰するキネティクスを計測した。その結果、ゲート電流の移動チャージ量が増え続ける膜電位範囲である110mVまで、電流の減衰速度が加速することがわかり、電位センサーの可動膜電位範囲において酵素活性がチューニングされることを見出した。 (2)ゲート電流が最も大きく発現することがわかっているゼブラフィッシュVSPをtsA201細胞に発現させゲート電流の性質と酵素活性の変化について定量を行った。活性中心のシステインをセリンに置換した変異分子では有意にゲート電流が加速し、ホスファターゼの阻害剤であるバナジン酸でも同様な効果が確認された。この効果は、酵素活性が消失したことで細胞内のホスホイノシチドの環境が変化したためではなかった。実際長い脱分極を与えてPtdIns(4,5)P2のレベルを下げた条件で記録したゲート電流は正常時と変わらなかった。 (3)酵素特性の詳細を明らかにするため、Ci-VSPおよびゼブラフィッシュVSPについて細胞内領域とGSTの融合蛋白を作成し、マラカイトグリーンアッセイとTLCアッセイにより各種ホスホイノシチドを基質として脱リン酸化能を解析した。PtdIns(3,4,5)P3以外にもPtdIns(4,5)P2に対して脱リン酸化能が確認された。現在PTENと比較しつつ、どのアミノ酸部位がVSPの基質特異性を決定しているのかを明らかにしようとしている。
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