研究領域 | 持続可能な発展の重層的環境ガバナンス |
研究課題/領域番号 |
18078001
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
植田 和弘 京都大学, 地球環境学堂, 教授 (20144397)
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研究分担者 |
新川 達郎 同志社大学, 大学院・総合政策科学研究科, 教授 (30198410)
宮本 太郎 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (00229890)
白石 克孝 龍谷大学, 法学部, 教授 (80187517)
長谷川 公一 東北大学, 大学院・文学研究科, 教授 (00164814)
新岡 智 関東学院大学, 経済学部, 教授 (00198409)
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キーワード | 持続可能な発展 / 環境ガバナンス / 重層性 / デ・カップリング / 環境と福祉の統合 / 福祉(well-being) / 環境政策統合 / イノベーション |
研究概要 |
これまで取り組んできた諸研究の中間総括的取りまとめを行い、その成果をまとまった著作として公表した。その中で、持続可能な発展の重層的環境ガバナンスの基礎理論を体系的に確立するという課題に対して3つの点で顕著な理論的成果が得られた。第1に、環境と経済のトレードオフ論の類型化とそれぞれの課題を明確にしたことである。環境と経済のトレードオフを克服する方法にはいくつかの類型がある。その1つが環境負荷を低減しつつ、経済成長を実現するといういわゆるデ・カップリング(切り離し)戦略であり、EUで公式に取り組まれている。その主たる実現方法には技術イノベーションと社会経済制度改革があるが、両者を統合化するパターンと与件となる既存制度の機能によって成果が異なることが確認された。第2に、環境と福祉の統合に関して、従来その必然性の指摘と実践的取り組みの紹介にとどまっていたのに対して、その理論的基礎を確立するべく検討をすすめたことである。その結果、デ・カップリング論とは異なり、経済成長を統合の要件とはしないことで環境負荷の低減は容易になるが、その代わりに環境と福祉を統合して得られる成果としての福祉(well-being)の決定要因たる富の蓄積が保障できない理論構造になっていることが明らかになった。第3に、重層性概念について、諸科学によって定義や使われ方によって共通する面だけでなく差異も大きく、ガバナンスによる持続可能な発展への総合化を試論的に提示したことである。着眼点はプロセスとしての垂直的環境政策統合であり、今後経済構造の変化に対応し動態的統合概念に発展させていく上での1つの基礎ができたことは貴重である。
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