研究領域 | 量子クラスターで読み解く物質の階層構造 |
研究課題/領域番号 |
18H05402
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大西 宏明 東北大学, 電子光理学研究センター, 教授 (60360517)
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研究分担者 |
成木 恵 京都大学, 理学研究科, 准教授 (00415259)
野海 博之 大阪大学, 核物理研究センター, 教授 (10222192)
青木 和也 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教 (70525328)
與曽井 優 大阪大学, 核物理研究センター, 教授 (80183995)
新山 雅之 京都産業大学, 理学部, 准教授 (90455361)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | エキゾチックハドロン / チャームドバリオン / ペンタクォーク / Λ(1405) |
研究実績の概要 |
本計画研究では、クォーク層からハドロン層、原子核層と続くこの世界に存在する階層出現の謎やその役割を、階層間に存在すると考えられているセミ階層の存否、その役割を明らかにすることから迫ることを目的としている。このプロジェクト目標を達成するため、我々は(1)ハドロンビームを使ったバリオン スペクトロスコピー実験、(2)高輝度光子ビームを用いたハドロンの光生成実験の2つの実験プロジェクトを同時に展開する。その成果以下に示す。 (1)ハドロンビームを使ったバリオン スペクトロスコピー実験(J-PARC E50) 当該年度、大強度ビーム飛跡検出器、ファイバートラッカーを完成させた。本検出器の完成で、ビームラインスペクトロメーターの完成がほぼ完了した。高磁場中で動作する飛行時間差(ToF)測定器の開発を始めた。小型プロトタイプを生成、想定される性能を得ることができた。データー収集系の開発に関しては、台湾AcademiaSinicaと共同開発をすることで、プロジェクトの推進力を高めることができた。 (2)高輝度光子ビームを用いたハドロンの光生成実験 高輝度光子ビームの安定化を目的としたレーザーシステムのメンテナンスを実施した。また、LEPS2実験の期間飛跡検出器であるタイムプロジェクションチェンバー(TPC)を実験装置一部として設置し、予定通りの性能が出ることを確認した。また、LEPS2実験における重要な粒子識別検出器であるエアロゲルチェレンコフ光検出器の設計、性能評価を行い、最終プロトタイプを製作した。最終プロトタイプ複数台をLEPS2スペクトロメーター内部に設置し、最終試験のための準備が完了した。量産体制はすでに整っている。来年度中の物理データ収集の準備は整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)ハドロンビームを使ったバリオン スペクトロスコピー実験(J-PARC E50)プロジェクトについて 大強度ビーム飛跡検出器、ファイバートラッカーを完成させ、ほぼビームラインスペクトロメーターの整備は整った。データ処理回路、収集回路、ソフトウエアーの開発については、台湾Academia Sinica のProf.W.C.Whang と共同開発していくことが決まった。これによりデータ処理回路の開発が飛躍的に進んだ。また当該年度、本プロジェクトと非常に関係が高いCERN -LHCb実験でのハドロン物理を牽引する研究者、Prof.T.LESIAK と Prof.T.SKWARNICKIを東北大学、大阪大学に招聘し、セミナー、研究会を通した議論で我々の研究計画の妥当性に関する議論を展開できた。当初、当該年度中に 実施するために準備を進めていた米国FNAL ENPHATIC 実験は昨今のコロナ禍で中止となった。来年度実施に向け準備は続けている。 (2)高輝度光子ビームを用いたハドロンの光生成実験(LEPS2)について 高輝度ビームを安定的に生成するために、既存レーザーシステムのメンテナンスを行い、光子ビームの高度化に成功した。また、LEPS2の主要飛跡検出器であるタイムプロジェクションチェンバー(TPC)を前方ドリフトチェンバーと一体化させ、LEPS2スペクトロメーター電磁石内に設置し、システム全体としてコミッショニングランを実施した。このコミッショニングランにおいて複数のの問題点が発覚したが、その後、対処をとることができた。また、粒子識別検出器であるエアロゲル光検出器の性能評価を実施、十分な性能が出ることを確認したのち、最終的プロトタイプを製作した。プロトタイプ数台を年度内にスペクトロメーター内部に設置、次年度から実施する最終コミッショニングのための準備を完了させた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)ハドロンビームを使ったバリオン スペクトロスコピー実験(J-PARC E50)プロジェクトについて これまでの成果をもとに、E50スペクトロメーターの完成に向け準備を進める。来年度より、読み出し回路やソフトウエアー開発に重点を徐々に移しつつ研究を進める。特に読み出し回路基板の心臓部であるFPGAをできるだけ早く調達する。製作する読み出し回路などをE50実験環境に近いハイレート環境下での試験を行い、開発の進み具合を逐次確認する。J-PARC E50実験を成功させるために必要不可欠となる米国FNALで実施するENPHATIC 実験成功のために最大限協力するとともに、我々が製作する検出器の性能評価を進める。今年までの成果をもとに、高磁場中で運転可能な飛行時間差測定器(ToF)の実機プロトタイプの製作に向けて準備を進める。ビームラインスペクトロメーターの残りの検出器を製作し、完成させる。製作した検出器は積極的に粒子ビームを使い性能評価を行なっていく。 (2)高輝度光子ビームを用いたハドロンの光生成実験(LEPS2)について 粒子識別検出器、エアロゲルチェレンコフ光検出器プロトタイプの性能評価を早急に行い、実機の量産を開始し、夏の加速器シャットダウンの間に実機をLEPS2スペクトロメーター内に設置する。検出器用の高電圧電源が老朽化し、安定な運転が困難な状況になっている。新規に高電圧電源システムを導入し、LEPS2実験、安定運転の準備を進める。前期の間に今年度までに製作した、TPC、前方ドリフトチェンバーなどを同時に運転し、最終コミッショニングランを実施する。このコミッショニングランで明らかになるシステムの不具合の洗い出しを行う。年度後期に全システムを使った物理データの収集を目指す。
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