研究領域 | 量子クラスターで読み解く物質の階層構造 |
研究課題/領域番号 |
18H05403
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
田村 裕和 東北大学, 理学研究科, 教授 (10192642)
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研究分担者 |
永江 知文 京都大学, 理学研究科, 教授 (50198298)
高橋 俊行 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (50281960)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | クラスター / ストレンジネス / ハイパー核 / K中間子原子核 / Hダイバリオン / ハイペロン核子相互作用 |
研究実績の概要 |
ストレンジネスをもつ原子核やハドロン系の研究をJ-PARCで以下のように進めた。 【1】Σp散乱(E40):Σ+p散乱実験を実施。π+p→Σ+K+反応で生成したΣ+が標的中の陽子と弾性散乱する事象を測定した。4月末のJ-PARC加速器故障により予定の半分強のデータしか収集できなかった。一方H30年度に取得したΣ-p散乱のデータ解析を進めた。 【2】Hダイバリオン探索(E42):ハイペロンスペクトロメータについて、電磁石の磁場測定、TPC用高速データ収集システム整備、ガス増幅部GEMの放電対策(放電頻度の大幅低減に成功)を実施。ホドスコープ検出器の実機と読出し回路を製作。KURAMAスペクトロメータの水チェレンコフ検出器は性能試験と実機製作を進めた。 【3】Ξハイパー核生成(E70):飛跡検出器用ワイヤーフィードスルーを金型から製作した。トリガー検出器用エアロジェルの残り半分を購入。以前データを取得したE70のパイロット実験(E05)の結果をまとめた。 【4】K-pp探索:E15実験で3He(K-,Λp)n反応でK-pp束縛状態とみられる信号が得られた。その束縛エネルギーは過去の実験の報告よりずっと小さく、両者の関係につき考察を進めた。E05で取得した12C(K-,p)反応包括スペクトルの解析も進め、K-でなくΛ*が束縛したと解釈できる深い状態の示唆を得た。 【5】Λ粒子の核内磁気モーメント測定(E63):標的用酸化リチウム(Li2O)単結晶を浮遊帯域溶融法で作製することに成功。軽いΛハイパー核の弱崩壊粒子測定用の多層シンチレータを試作した。 【6】Ξ原子X線分光(E07,E03): E07実験のエマルジョン画像データからΞ原子生成事象を選択し同時放出されたX線を調べ、世界初のΞ原子X線分光実験として手法を確立した。また別手法のΞ原子X線分光実験(E03)の準備も進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
4月末のJ-PARC E40実験実施中に、加速器の磁石が故障し、Σ+p散乱実験については予定の半分強のデータを取得した時点で中断となり、ビームタイム再開まで1年弱遅れることとなった。これによって、そのあとに行うE42, E70, E63といった実験も遅れるため、当初予定していた実験のうち、一部については新学術領域の期間内に実施することは困難となってしまった。一方でこれらの実験の準備は順調に進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
1年弱ビームタイムが遅れている間に、H30年度に取得したΣ-p散乱のデータ解析を進めた。また、E42実験、E70実験の関連実験であり、既にデータ収集が終了しているE05実験(Ξハイパー核分光実験)とE07実験(エマルジョンによるΞ、ΛΛハイパー核探索)について、より詳細なデータの解析を進めることとした。さらに、E40実験の次に同じK1.8ラインで実施が予定されているΞ-原子X線分光実験(本研究班のメンバー全員が共同研究者として加わっている)については、Ξ核子相互作用に関するE05, E07, E70実験と相補的な情報を与えれくれることから、このE03実験も本研究班の重要研究課題の一つと位置付けてこの実施に力を傾けることした。このように、研究期間内に少しでも多くの成果を出せるように研究プログラムを再検討した。
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